大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

名古屋地方裁判所 平成10年(わ)355号

主文

被告人株式会社河村産業を罰金一八〇〇万円に、被告人河村貫一こと鄭鐘元を懲役一年に処する。

被告人河村貫一こと鄭鐘元に対し、この裁判が確定した日から四年間刑の執行を猶予する。

理由

(犯罪事実)

被告会社株式会社河村産業(昭和五七年一〇月一二日から平成八年五月三〇日までは有限会社河村産業)は、愛知県春日井市坂下町三丁目一一三〇番地の二に本店を置き、産業廃棄物処分及び土木建築工事の設計並びに施工請負等を目的とする資本金一〇〇〇万円の株式会社であり、被告人河村貫一こと鄭鐘元は、被告会社の代表取締役として、同会社の業務全般を統括しているものであるが、被告人鄭は、被告会社の有業務に関し、法人税を免れようと考え、売上の一部を除外する方法により所得の一部を秘匿した上

第一  平成五年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が三三七二万九〇一四円であったのに、同六年二月七日、愛知県小牧市中央一丁目四二四番地の小牧税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が零であり、納付すべき法人税はないとの虚偽の法人税確定申告書を提出し、不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額一一五八万二二〇〇円を免れた。

第二  平成六年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が八五四〇万九〇八四円であったのに、同七年三月二日(郵政官署消印同年二月二八日)、前記小牧税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が八三七万六一九八円で、これに対する法人税額が一八三万八七〇〇円であるとの虚偽の法人税確定申告書を提出し、不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額三一〇三万二二〇〇円と申告税額との差額二九一九万三五〇〇円を免れた。

第三  平成七年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が六三八六万一二二一円であったのに、同八年三月一日(郵政官署消印同年二月二九日)、前記小牧税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が二五九一万八二七六円で、これに対する法人税額が一四三〇万九五〇〇円であるとの虚偽の法人税確定申告書を提出し、不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額二八五三万八一〇〇円と右申告税額との差額一四二二万八六〇〇円を免れた。

(証拠)カッコ内の甲乙の番号は、検察官請求証拠番号を示す。

全部の事実

一  被告代表者兼被告人鄭の公判供述、検察官調書(乙2から6)

一  吉原君子こと鄭君子の検察官調書(甲11)の大蔵事務官調書(甲9、10)

一  河村鍾根こと鄭鍾根の大蔵事務官調書(甲12)

一  査察官調査書(甲4から6、8)

一  資料入手報告書(甲13)

一  写真撮影報告書(甲15、16)

第一、第二の事実

一  査察官調査書(甲7)

第一の事実

一  証明書(甲1)

第二の事実

一  証明書(甲2)

第三の事実

一  証明書(甲3)

(法令の適用)

罰条

被告会社 法人税法一六四条一項、一五九条一項

被告人鄭 法人税法一五九条一項

刑種の選択(被告人鄭) 懲役刑

併合罪加重 刑法四五条前段、刑法四八条二項(被告会社、罰金額を合算)、刑法四七条、一〇条(被告人、犯情の最も重い第二の罪の刑に加重)

執行猶予(被告人鄭) 刑法二五条一項

(量刑理由)

本件は、被告人鄭が代表者であった被告会社の法人税法違反事件であるが、ほ脱税額は合計で五五〇〇万円と多額である上、ほ脱率も平均で約八〇パーセントと高率である。動機は、個人的な蓄財や見栄、あるいは遊興費というものであって、酌むべき事情はない。本件は、長年にわたっておこなっていた犯行の一部に過ぎない。被告人鄭には、傷害罪により実刑に処せられた前科があるほか、昭和五九年には、廃棄物処理及び清掃に関する法律違反により懲役一年、三年間刑執行猶予に処せられた前科もある。被告会社も、被告人鄭と同様、廃棄物処理及び清掃に関する法律違反により罰金五〇万円に処せられている。この種多額の脱税事犯はまじめな納税意欲をそぐ危険性が高く、一般予防のためにも厳しい処罰が必要である。したがって、被告会社、被告人鄭の刑事責任はいずれも重い。

もっとも、本税は既に納付済みであり、重加算税等についても、土地を売却するなどして、速やかに納付すると述べている。被告人鄭については、犯行を反省し、被告会社ともども再犯のないことを誓っている。新たに税理士に依頼するなど再犯防止の対策もとっている。被告会社、被告人鄭とも、同種前科はなく、罰金前科もやや古い。被告人鄭が実刑となると、事業に与える影響も大きいことなど、酌むべき事情もある。そこで、被告会社と被告人鄭を、それぞれ主文の罰金刑と懲役刑とし、被告人鄭については、今一度刑の執行を猶予したが、猶予期間は長期にした。

(求刑-被告会社=罰金一八〇〇万円、被告人鄭=懲役一年)

(裁判官 安江勤)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!